朝起きて 気が付いた
わたしは 語り手たちの会 櫻井先生の元を去ってから 渡邉真喜子先生を訪ねて 教えを受けました。真喜子先生はご自身が難病で苦しんでいた時 啓示を受け 癒され 自ら 声によるヒーリングをはじめた方です。多くの女性が真喜子先生のまわりに集まりました。...... そういえば 櫻井先生もある意味で語りによるヒーリングをなさったような気がします。さて 真喜子先生のまわりにあつまる女性たちもまた 自分を癒すためにきた あるいはなんらかの空白を埋めにきた 方たちでした。
その会は銀杏の林のなか 明治時代に建てられた古雅な屋敷のホールでひらかれました。会のはじめに ひとりが1フレーズを歌いみなで唱和し つぎつぎに歌ってゆくのですが ときに甲高い声や 調子の外れたフレーズも生まれる それを先生はときほぐす 15分20分......30分 うたいつづけてゆくうちに 大勢でうたいつくるその調べは雑音が消え 磨かれすきとおって 天に昇ってゆくのです。先生にあのエクササイズはなんのためになさるのですか とお尋ねしたところ 先生は微笑みつつ わたしはみなさん(の声)を調律しているのです とおっしゃった.......
しばらくして先生や会の中枢のみなさん総勢12名で 青森へ旅をしました。日本海の畔で 波の音を伴奏にうたい踊り 母なる林檎の木 千年の銀杏と 波長をあわせ 十二湖をめぐる忘れがたい旅でしたが 途中 先生が 片腕のおふたりを激しく叱責するシーンを偶然見てしまい そっと先生の元を離れました。櫻井先生とのトラウマが甦ったこともあったのでしょう。しばらくして 風のたよりに身罷られたことを知りました。
スピリチュアルなボイストレーナーには その後 知り合った天音。さんがいます。この方も 天とつながることのできる稀有なボイストレーナーでしたが 悲しいご最期でした。命は息 イノチ・イキは古代では 同語であったそうですが 生きる にも通じますね。声とは息遣い 声をスピリチュアルな領域であつかう方は よほど注意深くなくてはならぬのだ 声≒息には底知れぬ秘密があると わたしは深く胸にしまい みだりに手を伸ばさぬように肝に銘じています。.... 語りを含め 声や霊的な領域において 謝礼をいただかない理由のひとつです。
さて 話が飛んでしまいましたが 真喜子先生は 『共鳴』 をたいせつになさっていました。(そういえば 天音。さんもですね カッチーニのアベ・マリアをみなで歌いました) 朝 目覚めて わたしは きのうの子どもたちの戦争 に足りなかったのは 共鳴 それだ と気が付いたのでした。.....
わたしは ユニット・カタリカタリ全体でする 語りが 自分ひとりの語りより好きでした。それぞれが語る ひとつひとつのものがたりの波紋が つぎつぎと ひろがってゆく とよもす津波のように 波動が 高まる そして 聴いてくれるひとたちとともに会場がひとつの世界になる それほどの喜びは ありません 共鳴 共振。 そんなとき 疲れなんかないですね しずかな安らぎと喜びと感謝がひたひたとおしよせる なにもいらない いい語りってそういうもの ねぎらいも称賛も いらない.... 『.恩寵』と言うことばが しっくりきます。も重要なのは うまい下手ではなく 曇りない『波動』をあわせること。
そのために ひとりひとりが歌う 唱和する 渡邉真喜子先生の エチュードを 場当たり 本番のまえに行います。昨日の本番前 メンバーひとりひとりの旋律は でこぼこでした。 2巡目をしましたが つながらない 高まらない。みなさん 自分の旋律をどう歌うかに腐心しつながってゆかない。ひとつの曲に昇華しなかったのでした。語りも そうですね なんといえばいいのかな 自分の世界のひともいれば 匂いをつけるひともいる 流れを断ち切るひともいる。ひとつひとつの語りはわるくはないし 深化したひともいるのだけれど このチームは まだ若いのでしょう。いっぱいいっぱいなんですね。
3.4年前 中学校で きのうのように 2公演別プログラムを 連続しておこなったとき 毎回のように 終演後 喜びに震えたものです。時間があれば ひとりカフェで 余韻にひたり その後7日は 向こうの世界とこちらの世界のあいだで 浮遊していました。鈴木メソッドを開発した方が育てた どなたも知る高名な女優さんがいます。百物語など語られる方ですが 鈴木さんはその方の演劇の舞台に 公演の間 毎日劇場に通われたそうです。それは ひと月に1度か2度 客席と舞台が一体となる 稀有なしあわせな日に めぐりあうためだったそうです。比較にはなりませんが わたしは 一回限りの公演で幾度もそれを味わいました。奇跡だったのですね。台本で徹夜 資料をあつめる 私財で照明や布や小道具を買い集める..... その喜びがあれば なんでもできたし 苦ではなかった。
この若いチームが 成熟するには あと数年はかかりそうです。本気のメンバーが残るのであれば もうすこし見守ってもいいのかな。けれど 社会情勢は日に日に悪化 米は10日待たないとこないし 飛行機は落ちる 道路は崩落する 生成AIは 跋扈する 電磁波がわたしたちのめぐりを飛び交う あらゆることに 闇黒時代の兆しがある 語り部はクライシスを告げるカナリアです。 わたしは今年来年となにが起きても驚きません。平和な時代は終わり 嵐の時代がやってきます。あしたの世界がどうなるかわからない。残された2回の 「子どもたちの戦争」に祝福あらんことを祈り 調律をするものとして最大の努力をいたしましょう。