甲府の旅 室伏学校 雁坂峠

甲府 湯村温泉に行きました。中央高速の事故渋滞で2.5倍 時間がかかりました。甲府は盆地なので冷え込むと思っていたのですが 温かかったです。甲府は4度目ですが 最後はジャズ喫茶を旅していた40年くらい前でしたから街並みはすっかり変わっていました。落ち着いてシック 県庁庁舎がいいですね。日本で最初にイースト菌でパンを焼いた丸十パン屋に立ち寄りました。オニオンラスクとフォカッチャはお勧めです。1時間遅れてホテル着 客室からは富士山が見遥せます。甲府から観る富士山は男性的です。

記念日ホテルはかつては富士屋グループだったようです。温泉は信玄の湯と謂われ源泉かけ流し、夕食は選択できます。わたしは懐石を選びました、朝は(お好きなものをお好きだけという 狩猟本能がくすぐられそのひとの本性があらわになる)例の形式 目の前で焼いてくれるオムレツが美味しかった。

昔 訪ねたジャズ喫茶は たぶん此処 JAZZ  IN ALONE

山梨県甲府市で50年近く続く老舗ジャズバーALONEのホームページ

雁坂峠をとおって 秩父経由で帰ることにしました。室伏学校です。明治の擬洋風建築.......

教科書なども展示してありましたが 明治の日本の気骨を感じました。昔の日本の子どもたちは 高度な教育を受けていたと実感しました。日本の体術 芸能 建築 すべての根底に 日本人独自の 呼吸法がありました。密息というそうですが 維新後 とくに敗戦後の教育は 占領政策によるものですから 封建的なものとひとからげに 残すべきものも 根こそぎ 捨て去られました。

グローバル化が 伝家の宝刀のように叫ばれ 教科書から 昔話が消えてしまいました。けれども 『民族の 神話 伝説 昔話を持たぬ 国は 滅びる』と 申します。昔話を残すことは 日本の 自然や民俗やひとのこころや歴史を残すことでも あります。日々 消え去ってゆくものを 残すのは並大抵のことではないが それらを守るのは語り部としての責務であるし 未来の子どもたちへの贈り物ではないでしょうか。

正直のところ わたしは昔話って そう得意ではなかった .....お月さま金のくさり かたつのこ ゆきんこおせき みのわの嘆き そういった耳で聴いた昔話は語りますけれど 淡々と昔っこ 語るのとは違っていた...... 民俗学者の野村敬子先生の会で 鬼女房かなにか聴いていただいた時 先生から 『森さんのは 芸術の語り 昔話じゃないよ』と 感想をいただいたとき 衝撃もありましたが 心のなかでは 納得していました。伝承の語り部さんが 語るのを聞く それはそれで心地よいのだが 聴いた話を録音しておなじように伝える それに意味があるのか確証がない。語りの会で同業のひとに語る それも意味がないとはいわないが 実際に小中学生に血わき 肉おどる昔話を...... 魂の震える昔話を......じかに聴いてもらわなくては....... 

都市の語り部のひとりとしてなにを目指すのか。....... 単なる書承の暗記の語り部にはなりたくない 自分で納得して血肉として語りたいとしたら 自らその土地に出向き風土を知りつたわるものがたりを あらたに立ち上げ 語ってゆくしかない.....とそのように考えます。正直のところ 日々消え去ってゆく日本を前に なにをどうしたらいいのだろうと 迷っていましたが 140号線 曲がりくねった雁坂道を走って 秩父荒川村に着いた時には 気持ちは固まっていました。

去りし夏 この道をはるか 右へどこまでも行ったら どこに着くのだろうと 夢のように思ったT字路でした。あぁ 道はつながっている。望めば たとえ苦しくても望んだところに行きつける。
『あんたはすごい語り部になるかもしれないね』とおっしゃった 先生のことばを頼りに ぽっつりぽっつり進みます。