ものがたりと真実  男たちの戦争 その9

もし お読みになっているのが 語り部さん 語り手さん ストーリーテラーさんだったら?
ものがたりと真実 という 有名な寓話をご存じだと思います。

厳しい顔をしたみすぼらしい真実 と 見事な刺繍のマントを羽織ったものがたりが共に
旅をするというおはなしですね。

ほとんどの語り手さんは 書籍から語られるので すでにストーリー/ものがたりになって
いるものを 語られるわけですが.....

一方 事実譚という ジャンルも 語りにはある。わたしのレパートリ-の1/3は 事実譚
戦争体験だけでなく さまざまな『生きているひと』『生きていたひと』の事実を ものが
たりとして語ってきました。
事実 真実には ひとの心を揺り動かす力が あります。語りの中では最強と思います。

ところが 若い語り部さんは フィールドワークで戦争体験を聴いたわけではないので
書籍から編集するしかない。男たちの戦争では3編 あづかりました。その3編と5つの
ものがたりをあわせて 太平洋戦史にまとめてゆくつもりでした。

今日 脚本に手をつけ おおざっぱに プロローグから エピソードをならべてみたの
ですが....どこか違う.....  ものがたり化が足りない 半熟卵かな
ものがたりは 単なる 事実では ないのです。原作に忠実に 虚飾も改ざんもなしで
ものがたり化するには どうしたらいい?

あぁ これは 若い語り部さんにとって とてもおおきな 課題になる みんな伸びるだ
ろうと思いました。

※ ところで 昔話野大元 出自には 『事実』があったわけですが その事実を聴き手
を喜ばせようとして おひれをつけたりしっぽをとりかえたり それぞれの 語り部が
語り継いでゆくうちに 昔話はエンタメになりました。

事実 真実を 伝えようとしたはずなのに 尾ひれのほうが大きくなったり ほんとうに
伝えるべきものが希薄になったり もしかすると全然違うものになったりもする。
もともとは 何を伝えたかったの?この話は ということもある。ものがたりと真実の
兼ね合いはなかなかむつかしいですね。